「防炎」と「不燃」とは?それぞれの違いや基準を比較解説

施設管理や会場管理、建設現場管理などを行う際に、「防炎」や「不燃」といった言葉を目にすることがあります。漢字のニュアンスから火災被害を抑えるものだということはわかっても、どう違うのか、どちらを選ぶべきかといった基準は理解しにくい部分かもしれません。
この記事では、「防炎」と「不燃」の意味や違いについて解説しています。利用されている場面や製品に貼られているシール・ラベルもまとめているので、併せてチェックしてみてください。
「防炎」の意味とは?
「防炎」とは、燃えにくい性質のことです。本来は燃えやすい布の繊維を薬剤等で加工し、炎が接しても着火しにくい性質に改良した素材を、「防炎素材」と呼びます。防炎素材を使って作られた「防炎物品」や「防炎製品」は、炎が当たっても焦げるだけで着火しにくく、着火しても自己消火することで延焼拡大を防ぎます。
「不燃」の意味とは?
「不燃」とは、燃え抜けにくい性質のことです。この性質を持つ建築材料を「不燃材料」と呼び、炎が接しても着火しにくく、材料の表面が燃えても裏面まで燃え抜けないという特徴を持っています。
また、建築基準法施行令第108条2の要件により、不燃性能について以下のように定められています。
- 燃焼しないものであること
- 防火上有害な変型、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること
- 避難上有害な煙またはガスを発生しないものであること
建築基準法によって定められている防火材料には、「不燃材料」と「準不燃材料」、「難燃材料」の3つがあります。3つの違いは、加熱し始めてから上記の性能を発揮する時間です。
不燃材料 | 加熱開始後20分間 |
---|---|
準不燃材料 | 加熱開始後10分間 |
難燃材料 | 加熱開始後5分間 |
防炎と不燃の違い
防炎と不燃の違いを、わかりやすく表で比較してみました。より詳しい利用用途や場面については、次の見出しでご紹介します。
防炎 | 不燃 | |
---|---|---|
性質・性能 | 燃えにくい、自己消火性がある | 着火しにくい、一定期間燃え抜けない |
認定の機関 | 総務省消防庁、日本防炎協会 | 国土交通省 |
利用用途・場面 | ・高層建築物や地下街、不特定多数の人が出入りする施設で使用されるカーテンやブラインド、じゅうたん等 ・政令で指定された建築物や工作物に係る工事用シート |
・耐火建築物及び準耐火建築物の壁や柱、床、梁、屋根、階段等の主要構造部 ・防火地域内にある屋外の看板、広告塔、装飾等 ・不特定多数の利用する建築物(特殊建築物)の内装材 ・戸建て住宅の延焼のおそれのある部分の外装仕上げ材 |
ラベル |
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※ラベルの画像はイメージです。
※現場シートキングでは不燃加工は対応しておりません。
防炎と不燃の利用場面
防炎性能を持っている防炎品には、消防法の防炎規制を満たした「防炎物品」と、日本防炎協会が認定した「防炎製品」があります。消防法により、防炎物品の使用について義務付けられているのは、高層建築物、地下街、建築・工事現場などの場所が挙げられます。「火災が発生した際に、被害が大きくなることが予想される場所」と考えるとわかりやすいでしょう。政令で指定された建築物や工作物で使用する工事用シートも、防炎物品を使う必要があります。防炎製品は、義務ではないものの火災被害を抑える観点から普及が図られているもので、寝具やテント、パネルやマットなどがあります。
不燃性能を持った不燃材料には、コンクリートやれんが、繊維強化セメント板やせっこうボードなどがあります。建築基準法によって、耐火建築物及び準耐火建築物の主要構造部や防火地域内にある屋外の看板、不特定多数が利用する特殊建築物の内装材には不燃材料を使用することが義務付けられています。例えば、映画館や百貨店、ホテルや飲食店、病院等の施設が該当します。また、戸建て住宅であっても、延焼のおそれのある部分の外装仕上げ材は不燃材料を使う必要があります。
まとめ
「防炎」と「不燃」の意味と違い、利用されている場面、製品に貼られているシール・ラベルをご紹介しました。
防炎物品・防炎製品や不燃材料は、それぞれ異なった特徴を持っており、基準や認定期間が異なります。使用を義務付けられていることもあるため、事前に確認をしておくことが大切です。
また、いずれも火災被害を抑えてくれるものですが、全く燃えないわけではありません。施設や現場においては、防炎物品・防炎製品や不燃材料以外の火災防止対策にも取り組むようにしましょう。
現場シートキングでは、防炎加工を施した現場シートを1枚から作成できます。今回ご紹介した防炎シール(※1)を生地に貼ることも可能です。
※1部防炎シールは生地1枚につき88円(税込)です。